2-36『ねじ金と妹とおっ母さん』
―高知県―
むかし、高知県須崎市(すさきし)というところに、ねじ金(きん)という、とてつもない力持ちがおったそうな。
あるとき、村の相撲大会(すもうたいかい)があったが、これに、どこの者やら、大っきな男が飛び入りしたと。
背丈(せたけ)は六尺あまり、目方(めかた)が五十貫ほどもある。今の言い方になおしたら、さしずめ、1メ―トル八〇センチに体重が約二〇〇キログラムもある大男だ。
それがめっぽう強うて、誰も勝てん。まるっきり勝負にならん。
「これじゃあ面白うない。ひとつ、ねじ金に出てもうおう」
と、村の衆が相談に行ったと。
そしたら、ねじ金は、
「おらは村の衆が相手じゃあ、はなっから勝負にならんけ遠慮しちょったけんど、そんなんがおるんなら喜んでおらがとっちゃろう」というて、裏山で竹をへし折って来て、手でしごいて、それをたすきにかけて行ったと。
大会の場では、ねじ金が来たいうのでいっぺんに盛り上がった。
「ねじ金、負けんなあ」
「大男も、負けんなあ」
と、口々に大騒ぎになったと。
さて、いざ相撲がはじまると、何のこたあない。ねじ金は五〇貫もあるその大男を軽々と頭の上にさしあげたと。ねじ金が、
「勝負はついた」
と、頭の上の大男にいうたら、大男は、
「まだまだ」
と言うたけ、いながら土俵へぶちつけたら、
「きゅん」
というて、大男は伸びてしもうたと。
このねじ金に妹がいて、その妹もこじゃんと力のある人で、ちょっと嫁さんにもらいてがなかったと。
けんど、世の中には物好きな人もおるもんで、この妹も嫁さんにもらわれて行ったそうな。
あるとき、嫁ぎ先の旦那が風呂に入りよっと。
風呂というても今のように屋根はついておらん。家の外へ釜をすえて、釜の下から火を焚いていたものであったが、そしたら、俄雨(にわかあめ)が降って来(き)た。そこで旦那が、
「早よう傘を持ってこい」
と呼んだけんど、妹はちょうどそのとき裏で炊事をしょったけ、よく聞こえんかった。
けど、呼ばれたらしいとは分かったので外へ出てみたら雨が降りよったもんじゃけ、あわてて旦那の入った釜ごと持ち上げて、家の軒下へ運び、置いたと。
ほいたら旦那がびっくりしょって、
「我が嫁ながらおそろし」
というて、ひまをやったと。
妹は仕方なく家へ戻ったところが、おっ母さんは、ちょうどカマドでオジヤを炊いているところだった。出戻った訳を聞いて、
「女はそういう力を見せちゃいかんというとったろうが、なぜ、力を見せた」
いうて怒ったと。
怒ったところが、おっ母さんも思わず知らず、傍(そば)にあった鉄の火箸を、ちぎりちぎり、クドに放りこんでおったと。
むかしまっこう猿まっこう、
猿のつべは ぎんがりこ。
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